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リリカルなのはの百合二次創作ブログ。GLなので苦手な方はUターン。※たまに原作沿いなものもありますが、基本原作無視です。パラレルが多め。どちらかというとフェイなのです。

明日から12月+紅葉+20℃越え

今日はとてもアイスが美味しい一日でした。
11月だというのに暑くて汗ばむほど。明日は10度くらい下がって例年並みに戻るみたいですけど。

ちょこっとばかり近況でも。

今月上旬ごろ免許の更新に行ってきました。
都合で平日午前だったんですが60、70くらいのおじさんが多かったですね。んで自分はものすごい猫背なんですが、少し丸めてる人はいても猫背の人はほとんどいないんです。やっぱ戦後でしたし時代の違いでしょうね。

あと20日京都に行ってきました。
相変わらずのぼっち参加ですが目当てのものはほとんど手に入ってホクホク……と思ってたら1サークル、10月のリリマジで出されてた新刊を買いそびれ(京都分の新刊は無事ゲット)通販待ちー。
何やってんだか。

そして来ましたね、なのは劇場版第二弾夏公開!公式トップ!フェイトちゃんのバリアジャケット!
紅白も奈々さん来ましたし今から楽しみです♪


はー。さてSSです。
前回のリク本当はこっちのSSを書いてたんですけど、完成に時間がかかりました。
なんだかんだ金色さんのリクに二つ応えてることに…まぁいっか。

そんなわけで狼の獣人フェイトさんです。
ただほとんどフェイなの要素ないですので。
長いのでもしかしたら携帯からだと途中で切れるかも。

続きよりどうぞ。



海鳴市、この町に古くから続く退魔師の一族があった。
姓を高町といい、昼は喫茶店を営む傍ら夜は魔を狩り町を駆け抜ける。
そして一族の中で最も強い潜在能力を秘めた末娘、なのは。


「お、お兄ちゃん、お姉ちゃん……待ってよぉ~――ぁうっ!」

屋根から屋根へ、まるで忍者のように飛び移っていく兄姉を追い二つに結んだ亜麻色の髪を揺らしながらアスファルトを走っていたなのはは、前方不注意だったせいか転んでしまった。
前のめりに転んだが、転び方が上手かったのか怪我は見られない。けれどその蒼い瞳には涙を浮かべ潤ませていた。

「あっ、なのはっ、大丈夫?」
「ふぅ……」

慌てて屋根から飛び降り、なのはが立ち上がるのに手を貸す姉の美由希。
すでに一人前の退魔師として活躍を見せる兄恭也は立ちどまりはしたものの降りることなく、ため息交じりに妹たちを見守る。
一族最強の能力は、未だ開花を見せない。



三兄妹に父より与えられた使命は、臨海公園付近に集まった魔の原因を突き止めること。及び、場合によっては原因の排除。
そしてそこにいたのは大きな黒い塊。

「あ、あんなのを、倒せってことなの……?」
「怖気づくな、なのは」

美由希にすがりつき震えた声を漏らすなのは。
明らかに怯えた様子のなのはと違い、恭也も美由希も各々武器を手にし剣呑な視線でそれを睨みつける。
公園に到着する少し前から感じていた息苦しいような不快感は中心にくればさらに強く、魔の集まる場所での症状にもたつきながらも圧し負けないように気を整えそれを見る。
大きな、車より大きい黒の獣だった。
見た目こそ犬にも似て、けれどそれ以上に獰猛な狼の姿。丸くなるように伏せていた魔獣がゆっくりと体を起こすと紫色の眼がそれだけで射殺すかのように恭也を、美由希を、そしてなのはを睨む。
全身を襲う恐怖、とっさに美由希が防御を張っていなければ確実になのはは泡を吹き倒れていただろう。
怖気づきながらも倒れることも、逃げる様子さえ見せない三人、むしろ睨み付けてくる姿に魔獣はつまらなさそうに僅かに表情を変え、一拍後、恭也が魔獣の牙を剣で受けた。いつの間に移動したのか、なのはと美由希より数メートル手前で交戦が始まった。
大きな体格からは想像もできないほど俊敏な動き、目で追えないほどだが恭也はそれに食いついて牙と爪をかわし、剣で防ぎながら致命傷ではないが確実に攻撃を当てていく。
だが致命傷を与えなければ倒せそうもない。

「なのは。自分の身を守る防御の術は出来るよね? なのははここで身を守っていて。私たちはあれを倒してくるから」

しばらくなのはを守りながら見ていた美由希だったが恭也からの視線に気づき、しゃがみ込んでなのはに告げると、ね、となのはの髪を撫でた。
そして恭也と同じ武器を手にし参戦すれば負う傷が増えた魔獣の動きは明らかに鈍り、一際強い打撃を繰り出した後距離を取り威嚇するものの長い舌をべろりと出し疲れきった様子を見せる。

「――これで終わりだっ」

僅かに気を緩ませたその一瞬を逃さず、背後に回った恭也の剣が魔獣の首を胴体から切り離した。



たった今魔獣が倒れた箇所にはもう魔の気配は欠片もなく、辺りの浄化を済ませてしまえば任務は完了だ。原因である魔獣が居なくなければ集められていた魔はやがて拡散し、息苦しさは薄れひんやりとした夜風が頬を撫でていく。
魔獣、魔族を倒さなければやがて人々が傷つくことになる。それが分かっていても、倒すことは殺すことと同義。
自分が手を下したわけじゃなくても、命がひとつ消えたことに間違いはない。

「同情は必要ないぞ」

そんななのはの心情を図ったように低い恭也の声。
倒してしまえばもう用はないとさっさと踵を返す。

「魔族、魔獣は人に害をなす、だから倒す。それが俺たち退魔師の役目だ。ぐだぐだと考えていて守るべき人が傷つくなんてこと、俺は見たくないからな」
「なのはは優しいからね。でもいつかなのはもちゃんと分かるよ。……そろそろ帰ろっか、明日もまた学校なんだからちゃんと休まないとね」
「……うん」

恭也が言う意味も戦わなきゃいけない理由だって分かるし頷くけれど、それでも倒して終わりなのはどこか寂しいし嫌だな。
眠気に負けそうになりながら家路に着いたなのはは悲しげに目を伏せた。





狼の魔獣を倒した次の日の夕方、ちらほらと人影の見える臨海公園をゆっくりと歩く制服姿の少女が居た。潮風に白い制服のスカートと亜麻色のツインテールが揺れる。
魔獣が居たことなど嘘のように長閑な夕暮れ、だが未だなのはの中には昨夜のことがわだかまっているのかその表情は浮かない。9歳の年齢に合わない物憂げな顔で波間を見つめ、目を伏せては重苦しいため息を漏らす。
しばらくそんなことを繰り返していたかと思うと何かしたら考え付いたのかキッ、と一変させた表情を上げたなのはは魔獣を倒した大体の位置へ足を向けた。
海から少し離れた木々の中、当然そこには何もなかった。魔獣が倒れた後も、魔が集まっていた気配さえないその事実は何か決心したなのはの気を再び重くさせる。
倒さなければいけない、それは分かっている、しかし何も残らないのだ。生きた(とは違うかも知れないが)証も死んだことさえ何もない。魔獣など無から生まれそして無へ帰す、たとえそれだけだとしても。
ゆっくりと静かに呼吸を繰り返したなのはは傷のない手を合わせ目を閉じた。合わせるだけ、ただそれだけ。
数十秒と短い時間だが、顔を上げたなのははどこかすっきりした様子だ。まだ燻っているようでもあるがそれも僅かなもの、ため息にも似た吐息を漏らしたなのはは突然勢いよく後ろを振り返った。

(……なんで、どうして?)

どくどくと心臓が打ち鳴るこの感覚は昨夜、狼の魔獣を前にしたときと酷似している。魔が集まっているだけでなく、そこに魔の物がいる気配。無意識に胸の辺りを握り締めたなのはは固唾を飲み込むと、気配がした方へ慎重に足を進めた。
通常浄化を成した後の場所にはしばらく魔が寄り付くことはない、清浄な気に負けるからだ。そしてこの臨海公園一帯の浄化をしたのはつい昨夜のこと、しかも退魔師として能力も強い恭也が成したのに、そんな土地に現れるほどの魔物は何だというのか。
魔獣のことを思い返せば、正直なところ逃げたいと思うなのはだ。けれどもしもすぐにでも害を成すような、狼のようなモノなら――なのはとて半人前で端くれでも退魔師。見て見ぬ振りなど出来るはずもなく魔の気配へ近づく。
狼のような息苦しさも威圧感もないが、肌にまとわりつくような魔の気配に顔をしかめたなのはが見つけたのは黒。中型犬より少し小さいくらいの、真っ黒い犬だ。だが感じる気がただの犬でなく魔獣だと告げる。
草を踏む音に顔を上げた魔獣は近づこうとするなのはを赤い瞳で睨みつけ、けれど立ち去る様子も襲い掛かる様子もなかった。ほんの数メートル程度物ともせず襲えるだろうに、それすら億劫そうになのはを見るだけだ。
その姿になのはは違和感を覚え、離れたままだがじろじろと狼を見回す。そして見つけた、前足の一部が爛れたように抉れ肉が見えているのを。

「あっ、ちょっと待って、動かないでね」

気付いたなのはは先程までの怯えた様子はどこへか、唸り声を上げ牙を剥き出しにする狼に近づくと傷に手をかざして緩く目を伏せる。瞬きの間に命を奪える相手に無防備な姿を見せるなのは、だが狼もまた格好の獲物を前に疑問か困惑か目を丸くする。そうしているうちに薄桃色の光に包まれた傷口がじわりじわりと塞がり始めていた。


どれほど経ったか、日が沈んでしまう前になってようやく光が消えた。深く息を吐いたなのはがようやく手を離せば生々しい傷は何とか塞がり、額に汗を滲ませるなのはは汚れるのも気にせず座り込んで後ろに手をつく。

「ほぅ……大体塞がったと思うけど、完全じゃないから気をつけてね。ごめんね、私回復も退魔もまだ上手く出来ないんだ」

退魔の単語にぴくりと片耳だけ反応する狼。それに気付かず力ない笑みを浮かべたなのははポケットからピンク色のハンカチを取り出し、まだ傷の分かる腕にそっと結びつける。

「あんまり激しく動いたりしちゃダメだからね、今はここまで。また明日、治療しに来るから」

用は済んだとばかりにじゃあね、と手を振り去っていくなのはをじっと見送る狼。
退魔でなく治療に来るとは、しかも明日もだなんて、彼女は自分が魔獣であることを失念してるんじゃないか。それはそれで好都合なのだが、どうにも調子が狂って仕方がない。さっきだってあんな好機に手を出さずに過ぎてしまった。
ため息を吐くように息を漏らした狼は明日も来るなら、と場所を変えようか考える。だが今は怪我をしている、見つかればやられるだけだ。ここは浄化をしたばかりだから、本来なら魔はいないと人間は思うだろう。ならば少々居心地は悪くてもここにいた方が安全に違いない。
交差した前足にあごを乗せ尻尾で鼻を覆うように丸くなった狼は目を閉じ、発達した嗅覚に彼女の匂いを嗅ぎつけ毛を逆立てる。言うまでもなく原因は前足に巻かれたハンカチだった。
人のにおいは嫌いだ。いつだって人は魔を、魔に属するものを悪とし虐げる。
なのはが持っていたハンカチは当然持ち主であるなのはの匂いが染み付いている。嫌なら牙や爪で引き裂いてズタボロにしてしまえばいい。だが狼はそうはせず、ただじっと結ばれたハンカチをまじまじと見た。
それに覆われた傷跡は退魔師の浄化に掠ったものであり回復まで酷く時間がかかると思われたが随分楽になり、魔獣の回復力ならあと数日で完治するだろう。

「退魔……」

数回口を開閉した狼は掠れた声で小さく呟く。
退魔はまだ上手く出来ない、確かに彼女はそう言った。ならば彼女は天敵である退魔師――狼を傷つけ、怪我を癒した。別の退魔師だが、なんとも皮肉なことか。だが、どちらにせよ。
ぎらついた紅が虚空を睨みつける。

「倒されるわけには、いかない」







なのはが狼の治療をしてから何日経っただろうか。
狼は次の日も、そのまた次の日も少し場所は変えつつも臨海公園にいた。それを喜んだなのはが学校が終わると臨海公園へ向かうのが日課になるのはすぐのこと。寝そべる狼の近くで、行儀は悪いが鞄を机代わりに宿題したり本を読んだりただぼーっとしたり、そうして日が沈む頃になって帰るのだ。
狼も狼でなのはが近づくのを拒むことなく悠々と昼寝をする、警戒心が薄いのは信頼か自分の方が強い絶対の自信があるからか、言わずもがな。
ほとんどを寝て過ごす狼はなのはへ干渉することは皆無に等しかったが、たった一度自分の名前を告げた。

――私は、フェイト。

二度目に会ったとき、前日と同じように治療で疲労困憊して帰ろうとするなのはの背中に告げられたそれ。狼の口から発されるそれは低く、不明瞭だったが聞き返したなのはにちらりと視線だけ向けて肯定を示したのだ。
以来なのはは何でもないこと、天気がいいだの風が冷たいだの国語が苦手だの、他愛もないことを喋りながら何度も繰り返しフェイトの名前を呼んだ。
ただ、生憎としてフェイトがなのはの呼びかけに答えたことは一度もなかったが。


「ねぇ、フェイトちゃん。やっぱり人と魔物って共存、せめて傷つけ合うことをやめられないのかなぁ……」

今日は何をするともなく木に寄りかかって海を眺めていたなのははポツリと、フェイトに答えを求めるでもなく声をかけた。
なのはとフェイトの関係はお互いに不干渉である以上良好とは言い難い、だが同じ時間を同じ場所で過ごすことは出来るのだ。ならば人と魔物は傷つけ合うだけの関係じゃなくなるかもしれない。
今は力もない、好き勝手に口にするだけの子供の理想論。
けれどきっといつか。

「私がもっと力をつけたら、本当に傷つけ合うだけじゃなくなるよね」

それは一体いつになるだろう。けれどひとつの目標を見つけたからか、瞼を上げた剣呑な狼の目に真っ直ぐに強い光を放つなのはの蒼い瞳が映った。

「えへへ、私、頑張るねフェイトちゃんっ。あ、そろそろ私帰るね」

だがやはり子供の浅はかな考えでしかなかったのか。

なのはが決意を新たにしたのも束の間のこと、不干渉ということで続いていた二人の関係は実際はとても脆く、変化を余儀なくされたのは夕方になり家に帰ってのことだった。



なのはの家は大きく、敷地内には道場もある。門を潜り正面に家があり、右の方に向かえば広い庭と道場だ。
フェイトのところから足取りも軽く帰宅したなのはは家に入ろうとしてふと、道場の方から話し声がするのに気付いた。耳を欹てれば低い父士郎の声と、少し苛立ったような恭也の声、そしてそれをなだめるような美由希の声もした。もしかしたら聞こえないだけで母桃子もいるかもしれない。

(あれ? 今日は退魔のお仕事あるって聞いてないけど……?)

庭に桃子を除く3人が集まるときは大方、退魔師としての鍛錬のため、もしくは任務を受け退魔に向かうための準備であることが多い。
最近はなのはも退魔師育成のため連れて行かれることが増え、その場合遅くならないように朝食のときに言われるのだが、いくら首を傾げ記憶を辿っても朝食の席で任務の話はなかった。
士郎がなのはに何も告げなかったということは単純な話、今日の退魔になのはは連れて行かないということ。推測できるのは他者を守ってられないほど強い相手ということになる。
しかしここでひとつの疑問が浮かぶ。
士郎は若手の育成に当たることが増えたが能力が衰えたわけじゃない、今でもかなり強いのだ。そして現在トップクラスの能力を誇る恭也と、彼より少し劣るが美由希も上位。そんな3人が揃って倒せない相手が、守っていられないことがあるのだろうか。
現在、退魔師の多くが高町の末娘の潜在能力に期待を寄せており、中には多少手荒でも強制的に目覚めさせてしまえばいいという輩もいる。さすがに士郎を代表とする者たちの猛烈な反対を受け成されないが、それでもまだ未熟ななのはを恭也たちがいるとはいえ退魔の任務に連れて行くのは修行の名目だけではなく、そういう思惑がないわけではないのだ。
それを今回に限って危ないからなんて理由で連れて行かないはずがない、むしろ覚醒するチャンスかもしれないのだから引っ張ってでも連れて行くだろう。
普段なら他に思い当たることもないからそういうこともあるか、と首を傾げながらも引っ込むが、生憎なのはには他にも連れて行かれない理由に思い当たることがあった。
仲良く、はないかもしれないが接触している魔獣――フェイトがいるのだ。もしも恭也たちの狙いがフェイトだとすれば退魔に連れられない理由も納得がいく。
ごくりと固唾を飲み込んだなのはは痛いくらい打ち付ける鼓動を抑えるように胸元を握り締め、士郎たちの前に出た。

「お、父さんたち、どこに行くの……?」
「なのは、帰っていたのか」
「今日の退魔はどこに行くのっ?」
「その様子からして見当はついているだろう? 臨海公園だ。狼の魔獣がいるとの報告が入ったからな」

狼の魔獣、やはりフェイトのことだ。
なのはは何か言おうと口を開くが、何を言えばいいんだろう? 言葉にならずただパクパクとさせるだけだ、士郎は頭を掻きながらため息混じりに続けた。

「最近のお前の様子を見てな、一人で出かけることが増えたし遅くなることもあったから気になって後をつけた。……先日の魔獣の討ちそこないか、いや小さかったから欠片から生まれたものだろう。――なのは、何故見つけてすぐに知らせなかった? 退魔師は魔を倒すもの、あれは魔に属し倒すべき相手だ」
「そんなこと、ないもん……フェイトちゃんは……」

諭すようにしゃがむ士郎になのははうわ言のように繰り返しながら首を振るだけ、それに焦れたのか恭也がなのはの小さな肩を掴んだ。

「なのは! 魔と共存なんてあり得ない。あれも今は傷つけずとも放っておけばいずれ人を、お前を傷つけるかもしれない」
「かもしれない、なら傷つけられないかもしれないじゃない! フェイトちゃんはそんなことしないもん!」
「絶対なんかない! あれを飼い慣らせるとでも言うのか?」
「っ、そ、んなこと……」
「なのはのそれはただの理想論でしかない、出来もしないことを口にするな」
「でも、フェイトちゃんは……」

ざわり、一瞬で重く変わった空気に士郎と恭也、美由希、そしてなのはの順にそれに気付いた。紺色の空を背に、屋根の上に立つ狼に。黒い毛並みの、いつもより一回りも大きく見える姿。前足ではためく薄桃色が場違いに見える。

「フェイト、ちゃん……」

弱々しく名を呼んだなのはに一瞥をくれ、狼は爛々と燃える赤い瞳で高町の人間を見下ろした。

(あれは弱い)

目の先には亜麻色の髪の女性と少女。

(……あれは、強い)

動かした視線に映る黒髪の男性二人と眼鏡の女性。野生の勘もありフェイトは瞬時に悟る。たとえ刺し違えようとも一人にすら勝てない、と。しかし。

「倒されるわけには、いかない」

ぽつりといつかも口にしたことのある言葉を呟いたフェイトは魔を纏った。とっさに気付いた経験の多い士郎と恭也はそれぞれ装備を手に取る。

「いかん、待て! 俺達は貴様を野放しにするわけにはいかない!」
「力では勝てない。だが速度で遅れをとることはない」

そのとおり、魔獣、特に狼の速度は速く到底追いつけるものではない。恭也が屋根に飛び乗ったときにはいつの間にか、すでに何軒か離れたところに立っていた。

「追えるものなら、追ってみろ」
「――フェイトちゃんーっ!!」

狼の口を歪め不敵に見える笑みと挑発だけ残し、風が起きたかと思えばその場にフェイトの姿はなく、なのはの叫びは闇に覆われていく空に吸い込まれた。





==





海鳴市の町外れにある人気のない神社の境内、そこに一人の少女がいた。
身に纏っていた白い制服は紺色のブレザーに変わり、ツインテールだった亜麻色の髪は腰辺りまで長く伸び左で纏め上げたサイドポニー。けれど真っ直ぐな強い光の変わることのない、蒼い瞳を持つ高町なのはだ。
6年前、まだまだ半人前の未熟な退魔師のたまごだったなのはは当代一の潜在能力を覚醒させ、15歳ながら力だけなら頭角を現していた。がまだまだ学生であり学業が本業だと、放課後修行がてらに簡単な任務を言い渡されるだけ。
今日もまた相手は実体のない、魔獣として生まれる直前の強い魔の集まりだった。実体がなければ当然そこに自我も意思もなく、ただ消してしまうだけ。それでも魔がすべて拡散したことを確認し、赤い宝玉を下ろしたなのはは今は何もない場に向かって暫し手を合わせた。
退魔師として力をつける前からずっと続けている所作、たとえ偽善といわれようとそれでもなのははこの行為を止めるつもりはなかった。

「――っ!」

風だけが流れるそんな静謐な空気を破ったのはなのは自身。勢いよく顔を上げるとしばらく動作を止め、それから突如走り出した。その速度たるやまるで風の如く、道なき道を駆け抜ける。





同時刻、海鳴臨海公園に二人の少女と、対峙する黒い影があった。
肩までの金髪に翠眼のアリサ・バニングスと紫髪にヘアバンドをつけた月村すずかだ。なのはの親友で、二人もまた退魔師としての修行を受けている。ただしこちらは魔獣が生まれる前の魔を消すことを重点的に行うだけで、本格的な退魔師を目指すつもりはない。
それはさておき。
今日は高町のほとんどが県外に出払っており修行は当然、稽古もないから久しぶりの休みということで学校帰りに寄り道をしていたのだ。

(……まずいわね、まさかこんなところに魔獣がいたなんて)

現在地は臨海公園の舗装された箇所から少し離れた木々の中、のさらに魔獣の作り出した結界の中にいた。
僅かに澱んだ空気を感じ退魔師の端くれである使命感から足を向けてみればこの通り、そこには集まった魔ではなく魔獣の姿。
海鳴市には現在、恭也は離れたが美由希に士郎、そして一番能力のあるなのはがいる。そしてアリサとすずかの手伝いもあり以前のように手が回らなくて魔獣が生まれ退魔に苦労する状況はなく、生まれる前に叩くのが基本になっていた。そのため今のようにいざ魔獣が現れると狼狽たえることになるのだが。
息も荒くその場に伏せていた魔獣はアリサたちに気付くとあっという間に結界に引き込み、徐々に弱らせるつもりだろう防戦一方の二人に攻撃を仕掛けては少し間合いを置いて様子を見る。ただ見られるわけではなく、隙を見つけてはまた攻撃を仕掛けてくるから僅かたりとも気を抜くことが出来なかった。

(この中からじゃ念話は飛ばせないし……っ、すずかもきつそうなのにっ)

アリサくらいのレベルでは念話を飛ばすにも集中力を必要とする、しかし魔獣からは意識を逸らせない。アリサかすずかのどちらかが防御している間に念話出来ればいいのだが、気配で分かるのかその都度猛攻を受けて出来ずじまいだ。さらに言えば結界の中は通常より魔が濃く、それを防ぐのにも気力が奪われていた。

(なのはが気付いてくれればいいんだけど)

思い出すのは任務があるからと一人別行動を取っている幼馴染、後ほど合流するつもりでいたがこんなことなら一緒にいればよかった。すずかも同じように考えてるだろう、辛そうな表情に疲労が見える。
魔獣が興味を失うことは万が一にもないから、このまま二人の気力が尽きるのを待つばかりか。

『ぎゃぁぁああああっ!!』
「「――ぇ?」」

絶望を覚え始めた二人だったが、同時に声を漏らした。
唐突に魔獣が断末魔を上げ輪郭をぼやけさせたかと思えば同時に結界が消えたのだ。状況を把握できずきょろきょろと辺りを見回し、お互い顔を合わせてみるがたった今までいた魔獣はどこにも姿形はなく結界も然り。

「なのは?」
「なのはちゃん?」

あれほどの魔獣を瞬殺出来るほどの退魔師など一人しか思い浮かばず、揃って幼馴染みの名前を呼ぶがその場にいない彼女が返事をすることはなく。代わりにいたのは全身真っ黒い格好で腰まで伸びた長い金髪を揺らす女性。腕を下ろせば巻かれた古い布が黒いシャツの下に隠れた。

「退魔師……?」

魔を倒せるのは退魔師だけ。その認識からどちらかが漏らした呟きは当然のものだろう。しかし数少ない退魔師の中で見たことがなく、こちらに興味もなさそうな彼女に怪訝な顔を合わせて首を傾げる。あちこち流離う退魔師など聞いたことがない。

「レイジングハート、お願いっ!」

――キィン

「っ!」

――パキンッ!

一瞬の攻防。
どこからか声が聞こえたかと思えば突如女性の体に巻きついて動きを封じるピンク色のバインド、しかし瞬きの間にそれは金色が覆い壊した。アリサとすずかが辛うじて認識できたのは退魔の術と魔が混じった気の名残だけ。
先に仕掛けたなのはは起動させたままのレイジングハートを片手に二人の前に立ち、気だるげに服を払う女性をじっと睨むように見つめる。
女性はふるふると軽く頭を振るとそっと息を吐いた。

「――私を捕まえるなんて、驚いたよ」
「どういたしまして、命中率は高いの。でも私もびっくりだよ、これでもバインドの腕には自信があったのに一瞬で壊しちゃうなんてね」
「どういたしまして、壊すのは得意なんだ。それにしても突然捕まえてくるなんてね」
「……賭けだったの。退魔の術はすべて魔に属するものにしか反応しないから、もしあなたが私と同じ退魔師だったなら怪我しないから大丈夫だろうって」
「結果、捕まったね私。魔に属するものだから当然だけど」
「人型の魔族?」
「ハズレ。正解は――」

ざぁ、と一際強い魔の流れが風として起きたかと思えばたった今まで女性がいた場所に堂々と立つ黒い魔獣の姿。狼の、赤い瞳。

『獣人型だ、なのは』
「――フェイトちゃんっ!!」

一体何が起こったというのか、まさか魔族と悠長に会話を交わしたかと思えば本性を現した魔獣の巨体に飛びつくように抱きついたなのは。微かに震える肩が彼女が泣いていることを窺わせる。だが一体どうして。

「「えぇええ~~っ!?!?」」

まったくもって状況判断が出来ずにいるアリサとすずかの悲鳴に似た叫びが響いた。







限界なので強制終了。



でもこの後嬉しそうななのはさんと、警戒心剥き出しのアリサさん、一歩引いて観察中のすずかさんに高町家に連れてかれて士郎さんと対面するんだ。もちろん殺気出してやる気満々。だけど先になのはちゃんに喧嘩しちゃダメだよ、と言われてるから挑発するだけ。
ふてぶてしい態度で、

「正直あなたと話してても面白くないんだ」
「人間の言葉に従う道理はない」

とか言っておきながらなのはさんに呼ばれたらすぐに、分かったって返事するんだと思う。
ちなみに耳と尻尾は普段隠してて、寝起きとかなのはさんと二人きりのときだけ無意識に出てそう



以下おまけ。はやてさん来襲


高町家に滞在してから数週間後。
常に浄化している高町家の敷地内の一角に突然魔が集まり始めた。どこか統率されたように見えるそれは凝縮し、そしてひとつの姿をとる。顕現した魔獣は狸に似ているか、集まった者のうちフェイトに詰め寄った。

『なんやねん、フェイトちゃん。そんなけったいな格好して、こないな人間に飼い慣らされてんかぁ? フェイトちゃんが蹴散らせんのなら私がやったろか』

低い声ながらも軽い口調で、けれど恐ろしいことを口走る狸にフェイトはすぐさま魔獣化すると唸り威嚇する。

『君が誰を倒そうと私は一向に構わないが、なのはに手を出すならいくら君でも容赦しない』
『はぁん、そうか、なのはちゃんいうんやな? 分かった分かった、いっちばん最初に倒したるわ』
『やれるものなら。私の速度には勝てないだろう?』
『勝つには速度があればいいもんと違うで、力もそうや。何より知恵がないとな、それはフェイトちゃんでも私には勝てへんやろ』

言葉を交わすごとに重苦しくなる空気、臨戦態勢を取る二頭を中心とし溢れた魔の奔流がその場にいるものを押しやる。だがそんな中たった一人、影響を受けていないのか今にも飛び掛らんとする猛獣たちに近づくと無言でレイジングハートを起動させた。
そして――

「い・い・加・減・に、しなさいっ!!」

集め固めた気の塊を二頭に思い切りぶつけた。
不意打ちにも近い横からの衝撃に、決して油断していたわけでもないのに吹き飛ばされはやては物影に、フェイトは何故か人型を取った。ただし珍しいことに出したままの耳と尻尾は情けないほどにぺたりと伏せ、丸まっている。

『えっと……』
「な、なのは……?」
「さて、フェイトちゃん。それからあなたも。ちょぉっとなのはとお話、しようか?」

なのははにっこり笑っているというのに脂汗が止まらないのはどうしてだろう。逃げ出したい衝動に駆られならがも逃げられない二頭、もとい一人と一匹に始まるお話という名のお説教タイム。

――躾、完了。





書ききれなかったけどフェイトさんが人型を取れるようになったのは、自分の名前を教えることで契約を交わしたから。でもお互い無自覚。
頭の回るはやてさんはそれに思い至ってなのはさんに名前を教えようとするが、気付いたフェイトさんの妨害と何となくで把握したすずかさんの策略により契約相手はアリサさんになりそう。
能力の有無をなしにしたら一番上はすずかさんかなのはさんだと思う
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コメント

ホントにスイマセン…

二個も書いてもらって

でも書いてもらって
嬉しかったですw
ありがとうございました!


リクエストではないですけど
最新とか楽しみにしています★


がんばってください!
2011/12/02(金) 18:43 | URL | 金色の閃光 #-[ 編集]
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プロフィール

ツバキ

Author:ツバキ
初めまして、ツバキといいます。
リリカルなのはの なのは×フェイト×なのはでSSを書く予定。
ネタばれ有り、原作無視有り
パラレルなんだと思ってください。

基本的に思ったままに書いていきます、あまり推敲なし。矛盾もあるかもしれません。

リンクフリーです。ご自由にどうぞ。
不定期な気まぐれ更新ですがよろしくお願いします。
※ありえないと思いますが無断転載禁止

※こんなの見てみたいとかありましたら言ってみてください。もしかしたら書くかもしれませんので。

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